親から子への無償の愛。
それはまあ、よく聞く言葉ではある。
それが真に存在するかは置いておいて。
ただ、娘と過ごしていると逆だなと思うことが多々あるのだ。
つまり、娘から私や夫への愛情が無償だと感じる。
私がどんなにへなちょこでも、暴君でも、娘は私が大好きだろうと確信を持って言える。
もちろん、成長の過程で自分の親はとんでもないやつだと気付かれて嫌われることにはなるだろうが、「今は」まだその時期ではない。
娘は親からの無償の愛を疑いもなく信じているし、無償の愛を私たちに注いでくれている。
ここで考えたくなるのは、私から娘への愛情は無償なのかということだ。
娘は可愛い。
生まれた瞬間から可愛かった。
初めて顔を見た瞬間「パパの目だ」と思った。
生まれてしばらくは、その感想通りパパにそっくりだった。
時間を経ていく中で少しずつ私の要素も現れてきて、今はふたりの遺伝子が混ざるとこんな顔に落ち着くのかと感嘆している。
どちらにも似ているから驚くのだ。
そんな娘が細切れに起きるとはいえよく寝ている時はそれなりに楽に感じていた。
時々目を覚ましている娘とどう遊べばいいかが悩みで、泣き止んでくれないとか、寝れないとかはあの時はそんなに思っていなかった。
これが徐々に起きている時間が長くなって、ハイハイ、つかまり立ち、歩けるようになっていくたびに大変になっていく。
堅牢に閉めたと思っていた棚も、今の娘は簡単に開けてしまう。
嘘だろう?と天を仰ぎたくなった。
そんなふうに手のかかるようになってきた娘は、もちろんパパやママに遊んでほしい。
その気持ちに、いつも応えられるわけではない。
今日はもう疲れた。ちょっとスマホを見させてくれ。いや、確かに見たい情報があるわけじゃないんだがね、ちょっとグダグダしたいのよ。あ、はいごめんなさい。ママがスマホ見てるの嫌だよね。
娘は「ダメ〜」と言いながら私の手からスマホをぶんどり投げ捨てる。
それを私は怒れない。
そもそも順序として娘を怒らせたのが私である。
私が料理中の時も、娘は本当は面白くない。
後ろの方でブレンディスティックとかをいじっているが、どこかで必ず飽きる。
鍋を見たいとか、コンロのボタンを押したいだとか言い出してめんどくさいことになってくる。
恐ろしいのは「これなに〜?」とキッチンの上に手を伸ばしてくるところだ。
下手をすると包丁に手が届く。
そんな娘をいなしながら私は夕食を作る。
できあがれば娘と一緒に夫を呼んで夕食だ。
夕食後は料理で汚れた鍋やらを洗う。食器も然り。
その間に夫は風呂を溜めながら娘と遊んでくれる。
私の片付けが終わるより、風呂が溜まる方が早い。
必然的に、娘は夫とお風呂に入ることになる。
そうなれば風呂上がりの娘を担当して、クリームを塗ったりパジャマを着せたり、髪をかわしたりしていたら夫とバトンタッチで私の入浴時間になる。
私が風呂から上がり、髪を乾かし歯磨きをして、娘も歯を磨けばもう寝る時間だ。
本当なら娘はもっと私と遊びたかったのかもしれない。
ちょっとぐずる娘を布団に押し込んで電気を消す。
そんなこんなで、私は娘の「ママと一緒に遊びたい」に十分応えられているとは思えないし、機嫌だって悪い時もある。
娘はいつだって「ママ好き!」とその小さな体から伝わってくるのに、私からはどうだろう。
昨晩布団で「〇〇ちゃん!」と自分の名前を娘が言うから、「そうだよ〜〇〇ちゃんはママとパパの宝物だよ〜」と返したら、「〇〇ちゃん、たからもの」と繰り返していた。
このやり取りをしたらなぜかすごく娘は落ち着いて「寝る」と言い出した。
まさか愛情が伝わっていなかったのではと、ちょっと不安になった。
不安だから、寝る前にぐずぐずだったのか?
確かに、最近保育園に登園する時すんなり離れることができない。
「愛情不足」
その言葉はいつでも脳裏をよぎる。
真正面から相手をしてやれない時に、いつだってよぎる。
なんせ娘の欲望は予測不可能なのだ。
言葉もおぼつかないから何を望んでいるのかわからない時すらある。
一体どれだけ散歩したいのかわからない。
何回滑り台を滑ったら満足するのかわからない。
何時になったら家に入ってくれるのかわからない。
だから、私は娘が帰ると言う前に散歩も滑り台も切り上げて、泣く娘を抱えて家に入る。
–これでいいのだろうか。
本当は娘が満足するまで付き合うべきじゃないのか。
そんなことを思いながら、娘を大人の予定に合わせる。
夕方の5時から夕食を作って、6時に食べて、7時にお風呂に入って、8時から9時の間にはお布団に入らせる。
そうしないと在宅勤務の夫は残業ができないし、娘の生活リズムは壊れると思うし、私は眠い。
でも、本当にこれでよかったのだろうか。
娘はぐずぐず言いながら寝る。
眠すぎてぐずぐずなのだとは思う。感じている。
でも、本当はまだ遊び足りないのでは?
ママとの時間が足りないのでは?
私の愛情は、私の機嫌がいい時の条件付きの愛情なのでは?
そんな不安がよぎるが、私も単純な性格だから疲れていて一緒に寝ついてしまう。
朝起きれば朝食を作って保育園の準備をするからやっぱりそうは遊べない。
やっぱり、ママとの時間が足りないかい?
私は、君を愛せているかい?
伝わっているかい?
安心できているかい?
本当に、子育てとは難しい。